私が彼と始めて出会ったのは数年前、蔵見学をさせて頂いた時のこと。当時から彼が副杜氏として
ほぼ酒つくりに関しては任せられており、見学の際も非常に丁寧に細かく説明して頂きました。
帰りに事務室で、その年の利き酒をしながらいろいろな話をすることができ、20代の彼の瞳はキラキラ、
言葉も心地よく響いてきました。そのせいか初対面の彼に、
「あたなの夢は?」
と聞くと間髪入れずに
「父の作ったこめで自分が思う最高のお酒を造ること」
とはっきりきっぱり背筋を伸ばし、真っ直ぐな眼差しで語ってくれました。
その彼の夢が平成30年全国新酒鑑評会で蔵として11年ぶりという金賞という形で実を結びました。
彼の父の作った酒米「結の香」で造った大吟醸は全国の鑑評会だけではなく県の鑑評会や
南部杜氏自醸清酒鑑評会でも高評価を得ました。
そんな彼が平成30年9月中旬に1本のお酒を持ってきました。
「飲んで見てください。」
相変わらずの真っすぐさが気持ちいい、口に含み転がした瞬間思わず笑みがこぼれてしまいました。
「いいね~、コレ!」
岩手県金ヶ崎町産100%の亀の尾の特別純米。暑い夏を超えたお酒は素晴らしい味のりでした。
味の膨らみも余韻もかなりある食欲の出てくる秋から冬にかけてピッタリのお酒でした。
彼の代表作となる1本。この特別なお酒に彼が以前話してくれたもう一つの顔・・・
彼が祖父から受け継いだ川西念仏剣舞の舞手としての顔がふと浮かびました。
②へ続く…